信州松本ぺんぎん堂

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海なし県にも海があった!?~海の付く地名の謎~

皆さま、ごきげんよう

信州松本ぺんぎん堂安曇野支店ぺんぎん兎丸です。

今日もご店主に代わりまして地元信州の話題をお届けします。

 

過日、某公共放送の "日本人の名前" にまつわる番組で

「長野県には海がないのに ”海” の名前が付く地名があるのはなぜか?」

と言う問いかけがありました。

「まさかの!?おなまえミステリー」
名字の多くは地形由来。にもかかわらず、海無し県の長野には海野サマや、新海サマ、海瀬サマなど海に関わる名字が多くある。さらに地名も、海野、小海、海瀬海尻など海がないのに盛りだくさん!一体なぜこんなことになっているのか?取材の先に見えて来たのは、まさかの【長野に海があったから】だった!?それぞれのミステリーを調査すると、私たちの概念を覆す、知られざる日本の文化・風習が浮き彫りになってきた。

 

www.nhk.jp

小海線は、山梨県北杜市小淵沢駅から長野県小諸市小諸駅までを結ぶJR東日本鉄道路線ですね。

八ヶ岳東麓の野辺山高原から千曲川の上流に沿って佐久盆地までを走る高原鉄道である。甲斐小泉駅 - 海尻駅間は標高1000 mを超える高所を走っており、清里駅 - 野辺山駅間には標高1375 mのJR鉄道最高地点がある。また、野辺山駅は標高1345 mのJR線最高駅であるほか、甲斐小泉から松原湖までの9駅がJRの標高の高い駅ベスト9に入っている 。(Wikipediaより)

こんな標高の高い場所に、なぜ海が!?

兎丸自身が、あまり不思議に思わないで来たのは、自分が住んでいる松本平・安曇野もかつては湖だったという、”たつのこ太郎伝説” に馴染んでいるからかも知れません。

www.pref.nagano.lg.jp

坊やぁ よいこだ寝んねしなぁ~ (^^♪

と、歌われるあのアニメのオープニングで龍の背中に乗っているのがたつのこ太郎ですね。

松本市にも "渚” と呼ばれる地域があるのですよ。

しかも、安曇野は「阿曇連はその綿津見神の子、宇都志日金柝命の子孫なり」と古事記に記された "安曇族" (古代日本を代表する海人族、海人部として知られる有力氏族で、発祥地は筑前国糟屋郡阿曇郷(現在の福岡市東部)とされる)が、川をさかのぼって内陸部の穂高までたどり着いた場所だと伝えられる土地。

実は山人ではなく海人の子孫だった可能性も大アリなわけです。だから、海にまつわる名前があってもそんなに不思議には思いませんでした。

 

話を小海線に戻しましょう。

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小海線 路線図

確かに「佐久海ノ口」「海尻」「小海」「海瀬」などと海の名前が並んでいますね。

この名前の由来については、小海町のホームページで確認することが出来ます。

仁和3年(887年)あるいは仁和4年(888年)に起きたとされる八ヶ岳天狗岳)の水蒸気爆発による大崩落によって千曲川の下の深山(現在の八那池洞門付近)が泥流によってせき止められ、海の口から、海尻にかけて大きな湖ができました。この時土村の除ヶ付近(現在の小海小学校付近)の相木川もせき止められ、相木の入口までの湖ができました(相木湖と呼ばれていた)。

海ノ口の湖水は寛弘8年(1011年)に決壊して無くなりましたが、相木湖はその後も残ったらしく、天正初期(1572年頃)古絵図にも記入されていますので、鎌倉時代の中頃(1300年頃)まであったと思われます。これが当時ここに入って来た人達によって「小海」と名付けられたものが小海の名前の起源と言われています。

www.koumi-town.jp

今から1200年ほど前の、八ヶ岳の水蒸気爆発は、相当規模が大きかったんでしょうね。「扶桑略記」には、仁和三年七月三十日(887年8月22日)に南海地震と共に起きたと記されていたのですが、その後に編纂された「類聚三大格」等によると仁和四年五月八日(888年6月20日)の天狗岳の水蒸気爆発によるものではないかと研究者の間では議論を呼んでいるようです。

 

2019年10月の台風19号千曲川の堤防が決壊し、洪水に見舞われた長野市の映像は皆さまの記憶にも新しい事かと思いますが、千曲川流域は1000年以上昔から、様々な自然災害に見舞われてきたのですね。

千曲川流域だけではなく、日本の国に住む我々は、数々の自然災害に見舞われながらも、その土地に生き、代々受け継いで来たのだと思うと感慨無量です。

 

昔の人は、思いを込めて地名を名付けていたんだなと改めて思いました。

新しい宅地開発などで、聞こえの良い地名に変えられたりしてしまった場所も、古地図や古い文献などで、もともとの地名を知ると、実は…ってこともありますよね。

自分が住む土地の歴史などを知ることにより、より愛着が沸いてくることもありますので、これからも機会があったら、地名を知る旅に出てみたいなと考える兎丸でした。

田中聖