こんばんは、茶々丸です。
私はこのブログでよくかんてんぱぱの商品を取り上げてきましたが、かんてんぱぱ好きが高じてついに伊那食品工業の塚越寛最高顧問の著書まで読んでしまいました。それがこちらです。
私は経営者ではなくしがないフリーランスですが、かんてんぱぱを作った塚越さんという方がどのようなお人なのか知りたくなって読んでみました。
私はKindle版で読んだのですが、もう最初から最後まで全ての行にマーカーを引きたいほど共感の嵐でした。こんな経営者の元で働けたら会社員としてなんて幸せなんだろうと。
私がかつて勤めた会社の社長さんは「君の月給よりも高いんだよ」とご自慢のゴルフクラブを見せびらかし、黒字になっても「会社に何かあったときに困るだろ」と決して社員に還元せず「きみたちを雇うのにいくらかかっていると思うんだ!」が口癖の方だったので、余計にうらやましさを感じたと言いますか。
塚越さんがどんなことを考えて経営をしてきたかというと、お客様に喜んでもらえるサービスや研究開発を続けるのはもちろん、社員をはじめ取引先や下請けの人たちもしあわせにすることです。
昨今では増収増益ばかりを追い求め、お金や株主を大切にして社員の幸せを顧みず、取引先を買い叩いたり下請けに無理をさせる会社も少なくないと思いますが、塚越さんはそうしたことを嫌っています。
増収増益は、そんなに大切なことでしょうか?大切なのは社員を始め弊社に関わっている人たちの「幸せ」です。
一気に成長することを目指すのではなく、木が冬の間も成長して年輪を刻むように着実に一歩ずつ前進していく。遠回りのようにみえてもその考え方で塚越さんは1958年から48期連続で増収増益を果たしました。
また、この本には全国の経営者のみなさんにもそうでない方にも読んでいただきたいくらい、珠玉の言葉がちりばめられています。名言カレンダーみたいなの作ればいいのになと思ったくらいです。
会社とは本来、雇用を確保し社員の人生を守るためにあるのです。それ以上に成長することがいいこととは思えません。
ただ単にこの言葉を聞いただけでは「そんな甘いこと言って」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、これだけ社員の幸せを追求して48期連続増収増益という金字塔を打ち立てたのですから、社員を守る覚悟があるかどうかが問われているのかなとも思います。しかも
私は弊社の「48年間、連続増収増益」よりも「20年間、会社が嫌で退職した人間はゼロ」ということに、誇りを感じます。
というのですから、最早誰も太刀打ちできない気がします。その経営哲学と人間性にです。
経営にとって「本来あるべき姿」とは、「社員を幸せにするような会社をつくり、それを通じて社会に貢献する」ことです。売上げも利益も、それを実現するための手段に過ぎません。
こういう考え方のかんてんぱぱなので、本社にあるかんてんぱぱガーデンやお店を訪ねても大変清々しいんですね。どの店舗の店員さんの接客も親切だし、店内はいつも清潔だし。
私は最初、勝手に塚越寛さんが伊那食品工業を立ち上げたのだと思いこんでいました。しかし、塚越さんは社員として入社して、当時傾いていた伊那食品工業の再建を託されたのだそうです。
そんな塚越さんはどんな人なのかというと、
1937年、駒ヶ根市生まれ。大学進学を夢見て県立伊那北高等学校に入学したものの2年生のときに肺結核を患い、高校を中退して療養。病室で安静にする毎日を送ったのだそうです。とても多感な時期だし、夢や希望で胸をいっぱいにする年頃だったのに、普通だったらここでしょげきってしまってもおかしくありませんが、塚越さんは違いました。
病が癒えたのちに伊那食品工業の親会社に当たる材木会社に就職し、21歳の若さで社員わずか十数名の経営が傾きかけていた伊那食品工業の再建を託されて社長代行となったのだそうです。当時、伊那食品工業はその頃まだ珍しかった粉末寒天の製造に取り組んでいたものの技術的には全くと言っていいほど未熟で、塚越さん自身が化学書をひもとき、生産機械を工夫し、一方で経理を整え、営業にも走り回ったのだといいます。そうしたご苦労があったからこそ卓越した経営哲学が生まれたのでしょうか。
この本の中には経営のエッセンスがむぎゅっと凝縮されています。塚越さんはかつて寒天ブームが起きたときにも地に足をつけてブームに浮かれて分不相応な拡大はせず、堅実に成長する道を選びました。世の中が金満主義に陥っているときにも堅実な経営を続けてきました。
塚越さんは現在最高顧問ですが、いまの経営者の方も塚越イズムを受け継いで年輪経営をしているといいなと勝手ながら思ってしまいました。そして、現在、コロナ禍でたくさんの人たちが経営に、お仕事に苦しんでいるけれども、その時代の中でも伊那食品工業は着実に年輪のように成長していってほしいなと思います。
また、現在も続いているかどうかわかりませんが、この本によると社員の教育に「教育勅語」を用いているという点も素晴らしいなと感銘を受けました。教育勅語は戦後、一方的に軍国主義的だと決めつけられて教育現場から姿を消しましたが、極めて真っ当な、常識的な人としての生き方を教えてくれているからです。
- 父母に孝行しよう
- 兄弟姉妹仲良くしよう
- 夫婦助け合いましょう
- 友達を信じよう
- 自分を慎もう
- すべての人に博愛の心を持とう
- 勉学に励み職を身につけよう
- 知徳を磨こう
- 人格を向上させよう
- 公のための仕事に励もう
- 法律や規則を守ろう
- 国に危機があったなら国のために力を尽くそう
ということです。ものすごく大切なことばかりではありませんか?
もしかしたら12番にアレルギーを起こす人がいるかもしれませんが、現在において国の危機は戦争ばかりではないです。このコロナ禍も国の危機に当たるでしょう。
コロナ禍で経営に、仕事に悩んでいる方、これから就職しようと考えている若者、これから起業しようとしている方、いろいろな方に読んでほしい一冊です。
そして、信州からこのような経営者が誕生したことを誇りに思います。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!